建築・デザイン系

第8回 建築系ひとづくりフォーラム
Part U

オークヴィレッジ・森林たくみ塾

2002年11月29日〜30日、岐阜県美濃市の「岐阜県立森林文化アカデミー」と岐阜県大野郡清見村の「オークヴィレッジ」「森林たくみ塾」にて、第8回 建築系ひとづくりフォーラムが開催されました。

※ このページは、「オークヴィレッジ」「森林たくみ塾」で行われたもののレポートです。

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飛騨山中で木の総合文化活動と
木工職人の育成をめざす

− 清見村から発信する「オークヴィレッジ」と
「森林たくみ塾」の活動 −

■白雪の降りたオークヴィレッジを訪ねる

 1日目の夜はオークヴィレッジ内に泊まり、佃氏を囲んで懇親を深めた。宿泊した「どんぐり邸」は、「森の自然学校」等を運営される「オークヒルズ」が管理されている。

 翌日午前、「オークヴィレッジ」の広大な敷地内と、近隣にある「森林たくみ塾」を、佃氏に案内してもらった。

 〔第2日目実施概要〕・日時:2002/11/30(土)午前

・会場:「オークヴィレッジ」(岐阜県大野郡清見村牧ケ洞)
http://www.oakv.co.jp/main.html

     「森林たくみ塾」(同・牧ケ洞444-3)
http://www.takumijuku.com/

・テーマ:木の総合文化活動機関と木工私塾の理念と課題

・参加:計21名(一般参加10名+会員11名)

・対応:ヴィレッジ側2名(多々羅徳一氏(広報室)、佃氏)、たくみ塾側2名(理事長佃正壽氏、総師範庄司修氏)


■30年余り前、仲間と始めた「オークヴィレッジ」の活動

 オークヴィレッジは、1974年、稲本氏や佃氏ら5人の仲間で創設され、今や全国的に知られる。家具製作販売、木造設計施工等の主事業の他、「ドングリの会」「森の自然学校」、セミナー等、木に関わる総合的多面的な活動を展開中で、東京や大阪にショールームも常設されている。

 塾長・稲本正氏は内外の幅広い活動で著名だが、当日は残念ながら所用で会えなかった。


■広大な山中に展開する多様な施設

 多々羅氏と佃氏に、ヴィレッジ内を案内してもらった。広大な敷地には、家具ショールーム、喫茶店、家具工場、設計事務所、木材加工場、自然体験施設、宿泊施設、構成員の住居など、多様な施設が広がる。

 多々羅氏にまずヴィレッジ内の自然を案内されたが、冬が到来し雪に埋もれる山々、草花、動物、池、自然楽器、水車小屋などに、自然の営みに直に触れる心地がした。

 家具製作は近隣企業とも連携しているとのこと。この山中には数十名のヴィレッジ構成員が働き暮らしていると聞き、一種の共同体活動のようにも見えた。


■木造建築グループの実践活動も

 ヴィレッジでは、木造建築の受注や設計・施工活動も行っている。本物の無垢材を使い、伝統的木組み工法で、各地の建築物や内装・店舗プロジェクトをこなしている。

 敷地内には、設計を行う事務所や加工場があった。施工は年季の入った職人グループが行うようだが、当日は関東方面で建前のため、会えなかったのが残念であった。


「オークヴィレッジ」の活動

●カフェ「リトルオーク」

●ショールーム「ハート・オブ・オーク」

●「森の博物館」(HPより)

●「森の自然学校」

●制作品の例(東京・大阪で出店の他、通信販売も)

●本格的な木造建築の設計から施工までを行なう部門も併設(各地でプロジェクトを実践)



●広大な山麓にオークヴィレッジの多様な施設が広がる(右手が本部、ショールーム、家具工場、自然体験施設など。左手の「どんぐり邸」で一泊) ●参加者が泊まった「オーク・ヒルズ」の「どんぐり邸」
●家具工場を訪ねる(周辺は、膨大な量の木材置き場)

●オークヴィレッジの山を背景に集合写真(冬に向かう山中のため、全員が防寒スタイル)

●初日夜、「どんぐり邸」で案内役の佃氏(左端)を囲んで懇親を深める


■家具のプロ職人育成をめざす「森林たくみ塾」

 たくみ塾は、ヴィレッジの母体活動から分化し、1991年開設された。(創始グループの佃氏と庄司氏が移籍)

 この塾は本誌でも紹介済みだが、木工プロの育成、私塾、2年制、授業料無料、徒弟制、現場主義等が特徴であろう。中心に「制作実習」と「自然学校実習」を置き、フィールドワーク(森づくり、米づくり)や各種講座を付加。

 塾は、最近、清見村の「ひだきよみ自然館」に移設し共同企画運営している。工房は意外に工場的な風景だが、ふだんは量産型家具の生産に関わり、個人別の制作等は、別時間に行うという。運営費捻出のため、日常の生産活動のほか、卒業制作展での販売も行う。(新宿・紀伊国屋等)


■新たに「環境教育」のインストラクター育成コースも

 見学後、佃氏から説明を受けた。コースは、「制作工房」と「環境教育」の2研修コース。定員は両方あわせ年間10〜15名、2学年で計25〜30名。応募は全国からあり、倍率3〜4倍。「プロになる意識」を重視。研修生の年代はバラバラで、平均28歳。6〜7割は社会人からの転身という。

 塾OBは、当初からの12年間で約120名。最近3年分では、木工関連就業は5割。その他、教育機関、指導員、環境関連団体、青年海外協力隊、進学、海外修業等へも。

 最近始めた「環境教育」研修コースは、持続可能な社会でライフスタイルを変えるための「環境教育インストラクター」の育成をめざしている。在籍は1〜2名だが、軽井沢のリゾートで環境教育スタッフとしての採用例がある。

 木工教育は、産業構造変化のため公共訓練施設では衰退しているが、本格的な取り組み姿勢に感銘を受けた。ずっと付き添って頂いた佃氏にお礼を述べ、高山市街、白川郷へとさらに北に向かった。

(秋山恒夫:フォーラム企画担当)


「森林たくみ塾」の活動

●たくみ塾が入る建物(清見村自然体験事業の中核施設の「ひだきよみ自然館」に併設し、共同企画経営。右手が塾の制作工房)

●工房内の風景(意外に近代工場的な様子に驚く。通常は量産型家具を製作し、個人別の課題制作等は別途行われるという)

●プロの家具職人を育成する「制作工房研修コース」「刃の研ぎ講座」等の風景(HPより)

●フィールドワーク「森づくり」と「米づくり実習」(HPより)

●「環境教育研修コース」(HPより)

●佃正壽理事長から説明を受ける

〔たくみ塾の理念は、本誌1998/3月号「特集・建築・デザイン系のものづくり人材の実践的育成」の佃氏の発言記事を参照。高山・白川郷の見学報告は、本誌2003/5月号「第8回木造研究部会」(杉本誠一)を参照〕

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