●11● JISSEN NEWS 2007.夏No.156


建築学会教育賞と実践研活動つながり

九州職業能力開発大学校 森永智年

 実践研活動のなかで教材開発とその実践の積重ねが今回日本建築学会教育賞(受賞テーマ「模型教材を利用した建築導入教育の実践」)に結びつく形になりました。ここでは、模型教材を作ることになったきっかけと教育賞応募に至るドタバタについて紹介いたします。
この模型教材は木造在来構法からはじまりました。15年前、福山職業訓練短期大学校インテリア科に在職していた頃、学生の半数以上が女子学生で建築構造におよそ興味を示さない様子をみて、何か工夫を凝らした授業展開をしなければと考えていました。新入生を迎え明日から一般構法の授業をはじめなければならないときになって、突然「模型を造らせよう。木材では時間と怪我の問題があるのでスチレンボードにしよう。」と思い付き、
一晩で部品図、伏図と姿図を描き上げました。意外とこれが好評で、その完成模型を基にした授業展開がうまく回りはじめたのです。
 共同受賞の京牟禮先生との関わりは、その二年後、福山に配属されて同室で机を並べたときからはじまりました。その年に出版社の営業担当の方が部屋を訪ねてこられて、雑談しているうちに模型の話になり、面白いので出版してみてはということになったのです。そして、京牟禮先生にも協力を得て「模型で学ぶ 建築構法入門 在来木造編」が完成いたしました。その後ツーバイフォー編へと続き、新たに奥屋先生を迎えて鉄骨造編を出版する展開になりました。そして、鉄筋コンクリート造編の開発へと続くことになるのです。
 模型教材の各構法別教材開発とその検証結果については、実践研発表予稿集(92,97,98,02)に報告しておりますので、参照していただければと思います。
 教育賞応募締切日の1週間前に、実践研の秋山先生よりメールをいただき、応募点数が少ないようであれば、枯れ木の賑わいとして協力しなければと勝手に勘違いして応募してしまったのです。当初は「木造建築設計ワークブック」で応募を考えていたのですが、執筆者の数が多過ぎて確認するのが煩雑であるため断念し、一時は応募をやめようかと弱気になりかけました。ところが締切り2日前に、模型シリーズのことを思い出して、京牟禮先生に話を持ち掛けたのですが、積極的姿勢は得られず、結局、推薦書と業績説明書を独りで書き上げ、校正を京牟禮先生にお願いして、何とか締切日前日の午後7時に宅急便配送所へ持ち込むことができたのです。(その時、その配送所で、大分工科短大の松尾先生とバッタリと出会うなど実践研つながりを多いに感じた次第です。)
その一月後、業績説明ヒアリングの通知を受け取りました。応募要項には記載されていないヒアリングの呼出しにはビックリもしましたが、旅費は自前と云うことで、京牟禮先生と旅費は折半で、私が代表してヒアリングに臨むことになりました。
ヒアリング控室で、実践研のひとづくりフォーラム関係の富山国際職芸学院の方々と親しく歓談できたことは、これも実践研つながりの縁であったと思います。
ヒアリング結果が不出来だったこともあって、すっかり諦めていたところに受賞の知らせを受取り、喜びよりも驚き方が大きかったように記憶しております。この受賞が能力開発施設でのものづくり教育訓練にいい意味での刺激になれば嬉しく思う次第です。